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『Boys featuring SHUN』

『Boys featuring SHUN』
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初めて石若駿君のプレイを聴いたのは、おそらくSweet Rainが開店して間もなくの頃だったと思う。
石若君はまだ高校3年生だった。
金澤英明(ベース)、石井彰(ピアノ)という大先輩と対等に渡り合った素晴らしいプレイに驚愕したことを鮮明に覚えている。
あれから5年間、Sweet Rainにはこのレギュラー・トリオで何度も出演してくれて、毎回、恐ろしい成長を遂げていくのを目の当たりにできたのは幸せな体験であった。
このレギュラー・トリオは、第1作の「月夜の旅」、中牟礼貞則(ギター)、寺久保エレナ(アルト・サックス)をゲストに迎えた第2作「Boys in Rolls」、そして第3作「Reflection」と毎回完成度が高まっている。

そして、今回の石若駿君の藝大卒業記念アルバムとして録音された第4作『Boys featuring SHUN』は、今までのすべてが凝集された名作になっていると感じた。
金澤英明、石井彰というベテランがしっかりと脇を固めたなかで、石若君は素晴らしいテクニック、美しい音色、変幻自在のリズムを聴かせてくれる。
完成度は恐ろしく高いけど、音に魂がこもっているので、こじんまりとまとまることなく溌剌としている。
石若君はすべてが素晴らしいが、僕は彼の美しい音色が特に好きだ。

そして、この作品には、飛びぬけた表現力をもつトランペッターの類家心平、イマジネーション豊かなサウンドを聴かせてくれるギタリストの井上銘、そして若干20歳ながら独特の「間」を繰り出すピアニストの高橋佑成が加わっていることも大きなポイントだと思う。
現在の日本のジャズ・シーンで最も才能豊かな若手が一堂に会して、その創造性を互いにぶつけあった作品でもあり、現代日本ジャズ・シーンのレベルの高さを示す作品にもなっている。
暫くはSweet Rainでヘビーローテーションになりそうである。

尚、高橋佑成君と、今年、国立音大ジャズ科を卒業したばかりの才能溢れるアルトサックス奏者の中山拓海君のDUOライヴが5月23日(土)にSweet Rainであります。
お時間ありましたら、是非聴いてみてください!才能溢れる若手プレイヤーのつくりだす新たなジャズを体験できると思います。

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これは最高傑作に違いない! Oncenth Trio 『3rd Album』Philosophy Of The Secre 


この1枚は、Oncenth Trioにとって、きっと会心の作品だと思う。
個人的には、過去の2枚をはるかに超えた最高傑作だと強烈に感じた。

当店にも月1度は出演頂いている栗田妙子さんの揺蕩うような独特のリズムのピアノと池澤君の繊細で少しユーモラスなドラム、そしてリーダー岩見君の優しく暖かいベースが絶妙のバランスでブレンドされている。

聴きやすいけど少しとげがあり、メロディックだけどインプロであり、とっつきにくいようで人懐っこい音楽だ。

特に栗田妙子さんの独特のメロディーラインと音色が全体のイメージを決めていると僕は感じた。
鋭くアウトするようで螺旋階段を回るようにゆっくりと引き戻される。川面のさざめきのように微妙に揺れるリズム。
僕は、彼女のピアノを聴くとなぜかブラッド・メルドーを思い浮かべてしまう。

どの曲も素晴らしいが、栗田さんがソロやいろんな人とのDUOでも聴かせてくれる「Mihashi」は特に気に入った。
それと、スタンダードの「I Should Care」。実に繊細で美しい。
「I.K.K.C」は、亡くなったピアニスト板倉克行氏とカナダのギタリスト、ケリー・チェルコ氏の頭文字を並べたもので2人に捧げられた楽曲とのこと。

今回からレコード会社が「地底レコード」にかわった影響だろうか、録音が実に素晴らしい。これまた僕好みの柔らかくも輪郭のはっきりした、引き締まった音で録れている。

中に入ってる写真も素敵だ。
栗田さんの凛とした美しさ、池澤君の繊細さ、岩見君の優しさがよく表現されている。

きっとSweet Rainでのヘビロテになると思う。
実現できるかどうかわからないけど、そのうち、Sweet Rainでもライブをやって生で聴きたいと思うのです。

[ 収録楽曲 ]
01. そらは濁らんでも
02. 明日への光
03. Mihashi
04. 魚雷船ロニー
05. Inn風呂
06. I Should Care
07. Sweet Rosa
08. そのとき生まれたひかり
09. 青い鳥
10. I.K.K.C
11. changement
12. Two ferrets two letters

チャノ・ドミンゲス./フラメンコ・スケッチズ~スパニッシュ・カインド・オブ・ブルー

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スペインのピアニスト、チャノ・ドミンゲスがマイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』発表から50年を記念してしてニューヨークのクラブ「ジャズ・スタンダード」でおこなったライヴを録音した作品。

「100%の自由度でジャズとフラメンコを融合した傑作の誕生!」とCD紹介にはありますが、まさに100%の自由度!

1曲目の「フラメンコ・スケッチズ」から、ほとんどマイルスの雰囲気を感じさせません。
チャノの鋭い短刀のように美しいピアノが空気を切り裂き、カンテが入ると一気にフラメンコの空気に包まれます。
そう、全体に非常にフラメンコ色が強く、そこが僕としては気に入りました。
3曲目の「ブルー・イン・グリーン」でのカンテも、なんだかエバンスの世界が郷土色豊かな民謡になったみたいで不思議な雰囲気です。
4曲目の「ソー・ファット」でのフラメンコのリズムに乗ってのタップと手拍子で、スペイン風の熱気は最高潮に達します。

最初にこのアルバムを聴いた時は、どうもカンテが浮いて、不自然に感じたのですが、何度も聴き返すうちにこの世界にはまりこんでしまいました。

まさに、フラメンコが完全にマイルスの世界を呑込んだ(融合ではない)傑作だと思います。

このアルバムを聴いた後にマイルスの「カインド・オブ・ブルー」を聴いてみてください。
実に新鮮に響くから不思議です。

Johnathan Blake   「The Eleventh Hour」

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ジョナサン・ブレイクの初リーダーアルバム「The Eleventh Hour」を聴いた。
素晴らしい出来栄えです!

2年ほど前に渡辺貞夫さんのライヴで聴いた時はそれほど印象に残らなかったのですが、このアルバムではハードでありながら繊細な実に素晴らしいプレイをしています。

その上、ドラムだけが目立つことなく、バンド全体のサウンドとして実に素晴らしい!

なにしろメンバーが、テナーはマーク・ターナー、アルトはジャリール・ショー、トランペットには、トム・ハレル、ピアノ・ローズにはケビン・ヘイズというニューヨークの腕利きミュージシャンが勢揃いして本気の演奏をしているのだから最高です。

僕の大好きなマーク・ターナーのうねうねうねうねと続くターナー節が絶好調です。
マーク・ターナー好きは絶対に買いです!

ジャリール・ショーの切れ味鋭いアルトもカッコいい。

トム・ハレルのリリカルなプレイ、ケビン・ヘイズの漂うようなローズのサウンドがアルバムを引き締めます。

ジョナサン・ブレイクのハードでありながら繊細なドラムの上で、これらの名手が最高のプレイを繰り広げ、最も魅力的な最先端ジャズを聴かせてくれています!

ニューヨークで生で聴きたい・・・
けど聴けないので、せめてSweet Rainで大音量で楽しみましょう!






栗田妙子 「忽骨 ko-tsu-ko-tsu」

Sweet Rainでもお馴染み、そして、最近、各方面で多彩な活躍を見せている栗田妙子さんの1stソロピアノアルバムです。

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心休まる、いつまでもいつまでも聴き続けたくなる、危ない魅力をもったアルバムです。
神様の赦しをもらうような心の平穏。そんなことを感じました。

1曲目の「ジュン」。いつもSweet Rainのソロライヴで聴くときよりも、ちょっとクラシカルな響き。
実に清澄です。
時々見せる独特の不協和音と柔らかく流れるように伸びる旋律がいつもの栗田ワールドを目の前につくりあげます。

2曲目の「Pas de deux (パ・ド・ドゥ)」。
美しいメロディ。
夜明けを待つ東の空みたいな曲。
映画音楽みたいだな。
ピアノの高音が美しい。

3曲目の「Tendu “10+10”(重ね重ね)」。
よくライヴで演奏してくれる楽しい曲。
心が地の底まで落ち込んだ日でも、この曲を聴くと、とっても楽しい、うきうきした気分になります。
よくこのメロディが1日中頭の中をぐるぐるぐるぐるして困ることがあります。

4曲目は「Mr.M (北に生まれ)」。
揺れるようなテンポ、独特のメロディーライン。まさに栗田ワールド。

5曲目は「Gecko Song (ヤモリのうた)」。
本当に月の柔らかい明かりに照らされる森の小道を歩くような感じの曲です。
時々、鳥のさえずりが聞こえるような。

6曲目は「Kuniphofia (トリトマ)」。
この曲もよくライヴで演奏してくれているような・・・
おとぎ話の一場面を思い出させるような曲。魔女とか王女様とか小人とか・・・。

7曲目は「Winter 36 (冬の散録)」。
日本的な、童謡のような懐かしいメロディーライン。
子供のころへの郷愁。
寒い冬の夕方、もう真っ暗になってしまった道を、遊び疲れて家に帰る時のような感じ。

そして最後の曲は「Plie “A sublingual castle” (舌下城)」。
映画のエンドロールで流れるような、余韻に満ちた曲。
聴き終わった幸せな気分。

さまざまな心象風景が心に浮かび、良くできた短編映画を観るような素晴らしいCDです。

末永く愛聴盤になると思います。

さて、Sweet Rainでは、この「忽骨 ko-tsu-ko-tsu」発売記念の栗田妙子ソロピアノ・ライヴを3月21日(水)におこないます。
20:00スタートの2ステージ。そして、なんといつもと同じように投げ銭です。
栗田ワールドに触れ、CDもこの機会に購入してお帰り下さい!


プロフィール

マスターDH

Author:マスターDH
マスターDHです。
普段はマーケティングコンサルタントとして働き、週末は中野のジャズダイニングバー「Sweet Rain」で居るだけマスターをしています。ジャズ、プログレ、クラシック、民族音楽と雑食性ですがかなり偏食でもあります。今だに、コニッツのようにアルトを吹くことを夢見ています。

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