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板倉克行ソロピアノat  Nakano Sweet Rain 4月6日

僕が大学生のころ、軽音楽部の先輩から、「阿部薫という凄いアルトがいる。聴いてみな」・・・と渡されたカセットテープを最初に聴いた時、何とも言えない脊髄がぞくぞくとするような震えを感じた。
東京にある騒というジャズ喫茶でのアルトサックス・ソロのライヴだった。

その頃の僕は、フュージョンが全盛を迎えつつあるジャズに興味を無くしかけて、いろんな音楽を聴き漁っていた。

なんだか見栄をはりたい若者の虚栄心もあり、かなり色々なアヴァンギャルドな音楽も聴いた。
P.I.Lの「Metal Box」やポップ・グループの「Y」に衝撃を受け、ピーター・ハミル、アレア、ワーク、フレッド・フリス、クリス・カトラーなどに溺れ、当時、北村昌士さんが編集長をしていたフールズメイトを熟読した。
そんな時代に聴いたのが、阿部薫。
そして、当時、関西に住んでいた僕の心の中に、騒というジャズ喫茶の名前はなんだか特別なものとして刻まれていた。

先日、もう閉店時間をとうに過ぎた深夜の1時過ぎに、Sweet Rainの常連のIさんが、かなり酔っぱらって、それ以上に酔っぱらっている一人の男性とともにお店に現れた。
そして、「この人は板倉克行さんといって、フリージャズの世界ではとっても有名なピアニストなんだ」と紹介してくれた、というか酔っぱらって話していた。
僕は、その名前は全く知らなかったが、ママは知っているようで、じゃ、今度、うちの店の投げ銭ライヴに出てもらえませんかという話になった。
かなり酔っていたので、きっと忘れているだろうと思っていたら、意外にも覚えていてもらって、今日のライヴとなったわけだ。

そして、板倉さんってどんな人かなとネットで調べていたら、You Tubeの音源があり聴いたのだが、その時、その音のもつ圧倒的な力に驚愕した。
そして、経歴などを調べてみると、ジャズ喫茶の騒、阿部薫・・・
そうか、この人もあの騒の世界にいた人なんだと思うと、懐かしさがこみ上げるとともに、今日のライヴへの期待、期待というよりも、胸の高鳴りが更に高まった。

そして、今日のライヴ。
最初の一音を聴いた時に、どうしてうちの店のピアノからこんなに凄い音が出るんだろうと驚愕した。
力強く、ピアノというよりも、店全体が震えるような低音、時々、拳で打ち込まれる重量級の響き、テーマからインプロヴィゼーションにいくときの、微妙なリズムの揺れ、透き通るように透明な高音。
まさしく、今までに聴いたことのない驚きの連続でした。
曲はオール・ザ・シングスとか枯葉とかキャラヴァンとか有名なスタンダードばかりなのですが、今までに聴いたことのないようなテーマの弾き方、そしてアドリヴの展開。そして何よりも圧倒的な音の力。

最後は、朗読に合わせて完全なインプロで、Sweet Rainは70年代末のアングラの世界のようなディープな雰囲気になりました。

さて、次の板倉克行さんのソロピアノ・ライヴは5月25日(水)20時からに決りました。
多くの人に是非とも聴いてもらいたいピアニストです。
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う~む、思わず唸った!随分長いこと冬眠をしていた、その眠りから醒ましたのは板倉克行だった。そして今また昔とつなげてくれた。ライブの確認の電話を入れた受話器から、思いもかけない懐かしい声が……よもやこの存在を憶えて呉れている人がいるとは!
板倉克行、我々は《板さん》と呼ぶ、彼が始めて騒に現われた日の事は絶対忘れないだろう。あの【スカ―ンッ!】と抜けてきた音、夾雑物を一切含まず空気を切り裂いて来た音!
そうさッ やりかけの仕事を放り出し私は飛び上がった!!
それほど凄いおとだったのだ!!!音はその人の本質をこわいほどハッキリと現す、恐らく今でも変わらない音をきかせるに違いない。沢山の人に聴いて欲しい、聴いて呉れとしか言えないのだ!!

Re: ありがとうございます。

> 板倉さんの音は本当に衝撃でした。こんな音を一人でも多くの人に聴いてもらいたいと思っています。Sweet Rainも微力ながら頑張りたいと思います。僕にとっては伝説のような人からコメントを戴いて、何だか不思議な感じです。ありがとうございます。
> それにしても、1979年、僕が大学2年の時に聴いた阿部薫の音の衝撃は忘れられません。
> もし、騒で生で聴いていたら僕はどうなっていたでしょうか・・・

今の音を、そしてあのスィートレインに……

今はいつか歴史になる
常に今この音を信じて聴かせる空間を造る人が居て、そこに今の音を出す演奏家が集まり、そして新たな歴史が生まれ…
みんなの意識の中にあの店のあの演奏家のあの音は凄かったと、語り継がれるようになる。
貴方は今大切なその仕事をされている訳ですよネ~
後から来る人達にとっては、あのスィートレインのあの演奏家のあの音の凄さと語り継がれていく、今まさにその現場に
居られて、昨日と明日を繋いで行く!とても大切で重要な仕事をされている、とても大変だとは思いますが、今 素晴しい音を出している演奏家を一人でも多く探し出して世の中に送り出して下さい。尚 今になって私の後悔している事、それはどんな時でもその記録を残して置かなかったと言う事なのです。其の時の音は其の時の音で二度と再び同じ時間は無いのです。どれだけあの素晴しい音を残して置かなかったかと悔いた事か!それは其の時の演奏家にも 後からくる聴き手にも申訳ない事だったと今更ながら思うようになりました
去り行く者の繰言ですが……是非とも頑張ってください

精進します。

よい音楽を感じ取る心を忘れないように、そして、魂を揺さぶる音楽の発信地となれるように。8月17日の板倉さんとアルトの飯塚知さんのデュオ。何かが起こればよいのですが!
プロフィール

マスターDH

Author:マスターDH
マスターDHです。
普段はマーケティングコンサルタントとして働き、週末は中野のジャズダイニングバー「Sweet Rain」で居るだけマスターをしています。ジャズ、プログレ、クラシック、民族音楽と雑食性ですがかなり偏食でもあります。今だに、コニッツのようにアルトを吹くことを夢見ています。

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